初・パルコ歌舞伎&三谷歌舞伎 『決闘!高田馬場』
[Review]
以前三谷の『十二人』が上演された(という)、パルコ劇場にて、『十二人』を早くも軽く超える名作『高田馬場』が生まれました。
今回のは十二人もうらみもあって(シツコイ?)、楽しみにはしていたのですが、そろそろ三谷的密室群像劇には単調さを感じ始めていたので、いい意味で裏切られたのは本当にうれしい驚きでした。三谷の新境地となればいいな・・
それと、パルコ劇場、小さいですね。中小劇団ががんばる場所というイメージがありましたが、何のつてもなく、ここでこの舞台をくることができたのは本当にラッキーでした。
作・演出 三谷幸喜
出演 市川染五郎、市川亀治郎、中村勘太郎、市川高麗蔵、松本錦吾、澤村宗之助、市村萬次郎などなど
話はもともとお染から三谷に打診があったらしいのですが、すぐに「高田馬場なんかどうでしょう」と具体的に題材を提案したらしいです。 これは染ちゃんにはうれしかったでしょう。
「高田馬場」といえば、パンフレットを見て知ったのですが、すでによく知られた話でバンツマ(田村正和の父の美形俳優)映画になっていたり、落語にもあるそうですが、歌舞伎では今回が創作。
赤穂浪士の堀部安兵衛の若かりし浪人時代(婿養子前は中山安兵衛)の話で、叔父がひょんなことから真剣勝負の決闘をすることになったと聞き、長屋の仲間たちの助けを得ながら高田馬場まで走って駆けつけるまでの話。
駆けつけた後の話がないところが『浪人街』とちょっと違うのですが、ラストシーンはとても絵になるシーンですばらしいものでした。
駆け出すまでは結構長くて、その間に十分、いっしょに走る彼らや、道を阻む中津川道場の彼らの人間像がさりげなく描かれています。
また、おもしろかったのは、三谷がはじめて回し舞台をつかったということで、ふつうに使うのかと思ったら、回っている間、1°たりとも無駄にはしない、凝りようで。ちょっと角度が変わるたびに笑わせてもらいました。 これは新しい演出でした。
それから音楽。長唄お囃子は正面奥に座り、目立たぬようになっているのですが、ちょっと新感線や蜷川歌舞伎的なアップテンポだが和風な拍子の歌が「パパパパパルコ歌舞伎〜〜♪」と歌ってくれてお出迎え。 脇にひかえる拍子木のひと(なんていうんだっけ)は川のシーンで水中ゴーグルをしたりして。
無機質でスタイリッシュな幕開けの舞台美術と反していたのがおもしろかったです。
それにしても、染と勘太郎のコンビの絵になると、『研辰』を髣髴させるし、主要キャストはみな二役をやって、「トリノ」ねたから「キレてないから」ねたまで、ちっちゃいとこも笑わせてくれました。
お染がやった役は飲んだくれの安兵衛と、敵の親玉、中津川道場のちょっとゲイっぽい男。
またうまくなったなぁ、お染さん。
勘太郎は安兵衛を慕う長屋の弟分の大工と、安兵衛の未来の義父堀部で、すごいじいさん。
なんだかいい具合に歳をとってきて、勘三郎に似てきた気がします。飄々としたところと迫力がどちらも増しました。今後がますます楽しみ。
あと、亀治郎の安兵衛の幼馴染と未来の妻の二役もおもしろく。とくに妻役…!(^^)
小物しか出ていないという陰口もきかれましたが、どうしてどうして、みんな誇りを持って、なおかつ思いっきり楽しんで創作しているのが伝わってきて感動です。
これぞ、歌舞伎。現代という時代にフィットした歌舞伎でしょう。ひさしぶりにお腹の底から楽しめました。
応援しちゃうよ、またまた♪