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『「赤毛のアン」に学ぶ幸せになる方法』茂木健一郎・講談社文庫

[Review]
『「赤毛のアン」に学ぶ幸せになる方法』茂木健一郎講談社文庫編集する友人の友人まで公開 2009年05月07日12:17
赤毛のアン」に学ぶ幸せになる方法がまだ、レビューに表示されないので、こちらに残します。


飛行機に乗る前にあまりにも時間があって、思わず本をいくつか買って、さらに2度目の浅尾はんにお茶漬けまで食べてしまいました。。


さて、この本の内容は、実は茂木さんが赤毛のアンの相当コアなファンだというカミングアウトと、同書籍と彼の間、あるいは多くの日本人との間の心情的な関係と成長への寄与だと思います。

私がこの本を迷わず手に取ったのは、赤毛のアンがわたしにとっても成長のかなり大きな部分を占めているから。小学生から大学卒業時に至るまで、要所要所で計7回、全10巻を読んだことを覚えています。 ただし、その後手にすることはなく、大事な宝物として相次ぐひっこしにも持って歩いているのですが・・・ その理由さえも、茂木さんは明らかにしてくれているのです。

実は、茂木さんがやった足跡の縮小版を私もやっています。たとえば、関連あるいは類似する世界観の小説を読みあさる、また、モンゴメリの他の小説は全部読む、さらにはプリンスエドワード島やシャーロットタウンの地図を確認、さらにはモンゴメリに関する評論を読む、など。
同じことを実は指輪物語オズの魔法使いでも評論や年表などを読み込むことをやっており、しかも一部には自分でも評論を書いてました。
それでは大学で英文学をやればよかったのに、といわれそうですね。


この文庫に戻ると、アンには2つの大きな奇跡があったといいます。1つは家(帰るところ)を見つける、もう1つはパートナーを見つけたことです。

これはもう、奇跡と言われれば、何も言えませんが、本当に何度読み返したかしれない、1巻最後の部分。彼女の人生が大きく転回する場面が続きます。その中で、一貫して持ち続けた思いが形になる瞬間があり、それが心を打ちます。

茂木さんは、その後2巻以降は1巻がなければ何の意味もない、生きながらえているだけの巻といった言い方ですが、それでも女性にとってみれば、少なくともわたしが読み込んでいた時代には、それがあるべき、目指すべき、女性の理想の人生像を克明に描いたものだったのです。
それは茂木さんに言いたい。


2つの奇跡のほかに、この文庫に書かれているいくつかのポイントがあります。
大人になるということ、運命を受け入れるということ、幸せの花を見つけるということ。

そこここに茂木さんらしい、考察があり、楽しませてくれるのですが、とくに日本人の心情についての分析は楽しい。

日本のもっともコアとなっている考え方は「生命哲学」、ある種「もののあはれ」である。

すべてのものに八百万の神が宿る日本。日本人だからこそ、アンのすべてのものへの愛情に共感するところがあるのでは。という。

たしかに、日本人が今後大切にしなければならない、次代の子供たちに伝えなければならない心も、このもののあはれといえるかもしれない。これはぜひ、仲間たちに伝えたい。

茂木さんによると、もののあはれは、さらに言えば、移ろい変わりゆくものとしてとらえられるという。
アンの人生の曲がり角、という1巻最終章の中の表現は、脳科学セレンディピティ、偶有性にも通じるものがある。「人生どうなるか分からないからこそ人は成長できる」―


さらに、奇蹟を呼び込む方法についても書かれています。奇蹟と聞いた時のかなりの脱力感を見越されたような一節です。

奇蹟と出会う瞬間を求めて、日々をひたむきに生きる(茂木健一郎、以下同)

心の中に隙、あるいは空白をもつ。空白があれば受容できるということであり、他者を受け入れて、その上でさらに自分が変化できる可能性があるということ。マリラだって突然のアンの出現にもかかわらず、受容した。

常に美しい世界を心に持ち、たくさんの感動を見つけ出す。そうしてひたむきに生きる中で、やってくる運命を受け入れる。


運命を受け入れる ― 難しいことのように感じてしまう自分がいます。
自分の与えられた運命に抵抗があるからだとわかっています。

それでもなお、心に美しい世界を持って、ひたむきに、心に余裕をもっていつか奇蹟が起こると信じ、年々ハードになる仕事をし、親の世話をし、少しの楽しみを大切にひっそり生きる。

これが正しい道なのか。こんな厳しい生き方が現代の人間に与えられた生き方なのか。わたしにはまだわかりません。が、自分も10年前に気づいた、人として恥ずかしくないように、近道でなくても、正しい道を行くという考えとあっているので、生きにくい世の中、自分以外にも同じようにつつましやかに生きている人たちもいるのだと思い、やっていこうと思います。


それでも、まだ、8回目にアンシリーズを読む気にはなれない自分がいます・・・