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個人的な生活と思索の記録です

それでも夜は明ける ~ 12 Years a Slave

映画『それでも夜は明ける』公式サイト 大ヒット上映中!

いい映画を観てきた。これが一番の感想です。
近年大変多いですが、実話に基づいた話には心を打たれます。
しかも、私たちと同様、自由が当たり前の一人の人間が、ある日突然、拉致されます。その日から、奴隷として、ものと同様売り買いされ、行動や食事、持ち物、さまざまな自由を拘束され、これまでの社会生活は家族に会うことも含め一切認められず、ただただ、資産家である農場主の資産の一つとしていいように合わない仕事をやり、鞭で打たれ、憎むべき行動もとらなければならない...
苦しい以外の何ものでもない生活。それが12年にもわたって続いたのです。
その抜け出したきっかけさえ、自分自身の不断の努力がなければ、一生続いてもおかしくない世界。
映画の最後に、同様の目にあった人たちの中で、このように抜け出せたのはほんの一部でしかないとのメッセージがありました。

思ったよりも、目を覆いたくなる絵は少なく、また時間を数えるようなこともありませんでした物語にありそうな、農場主は完全なる悪という描き方もされていません。資産が不足する資産家の事情もどこかで理解できてしまったりするのです。
そうした演出が、ますます自分が主人公と同様の体験をしているかのように感じさせてくれる、映画です。派手でもない、過剰な演出もない、けれど素直に観る者の心に入ってくる。
それが、おそらく今年度アカデミー賞作品賞として評価された所以なのでしょう。

たしかに、俳優陣はすばらしかったです。
プロデューサーのブラッド・ピットはちょい役ですがかなり重要な存在感があります。
のちの農場主のマイケル・ファスベンダー、その前の農場主のベネディクト・カンバーバッチも、事前の予想番組等で取り上げられていましたね。助演女優賞を取ったルピタ・ニョンゴは映画の中でとても美しかったです。そんな役どころではないのですが、体当たりな感じが伝わってきます。

主人公のキウェテル・イジョフォーは、知っている方は少ないかもしれません。私はイギリス映画の『キンキー・ブーツ』での演技をすぐに思い出しました。試写会で鑑賞してから、かなり気に入っているヒューマンな映画なので、今回主役をやっているのがうれしい驚きでした。
キウェテルは、今回のシリアスでインテリジェントなアメリカンとはまったく違い、1段抜けきったドラッグクイーンをやっていました。もちろん女装です。そういえば、あの役も実話の中の主役でしたね。

それでも夜は明ける』に戻りますが、これは、次に何ものかが来そうな感じがする今の時代の空気も含めて、鑑賞するべき作品なのだと思います。それでないと、昨年の『アルゴ』に似た空気感がある『アメリカン・ハッスル』が無冠だったことに納得がいかない(観ていませんが)、そんな気がします。

音楽もよかったですね。ゴスペルが悲しい曲だということを初めて実感しました。