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個人的な生活と思索の記録です

言語障害のリハビリを引き継いだ

えらそうなことでは まったくなくて。身内のリハビリをとあるリハビリ病院でお願いしていたのが、この12月末でいよいよ終了となりました。

その成果はというと、ご想像のとおり、そう簡単には完治しないし、なおかつ病気が失語症(とその他細かい高度脳機能障害の症状たち)のため、まあたとえ十分若い方でも、一生がんばってリハビリを続けたとして、100%病気前のような状態には戻りません。たとえ、周囲の人間が「完璧だ!」と感じたとしても、ご本人にとっては、全くもってなおった感じがしないと言うのが悲しいところであり、一方で、一生回復を続けることができる幸運な病気とも言えるかもしれません。

というわけで、終了と同時に、以後のリハビリをわたしが担当することにしました。

とはいえ、リハビリの資格をもっているわけでも、5年間毎週見ていたわけでもありません。ただ、どんな宿題をどうやっていたのかは少しは分かるので、まずはありったけのワークシートをいただいてきて、その続きを作ることにしました...!

さっそく在庫がなくなったのは、50音順の1つの音を含む単語を並べたリスト。
これはなにをするかというと、

(1)この単語の読みを書く。
(2)音読する。
(3)この単語を含む文章を作る。
(4)リハビリ日に先生に会ったら単語と文章を音読する。

先生は、
(5)単語の読みと文章が合っているかをチェック。

こんな感じです。

簡単そうで、一番難しい宿題だそうです。読みでまずつっかえます。以前にも書きましたが、ひらがなは表音文字なので、とても覚えるのが難しいのです。とくに見ていて大変そうなのは、カタカナ語にひらがなのよみがなをつけること。一見ばかばかしいかもしれませんが、これは本当に難しいだろうなと思います。

世の中の、よみがなをつけたり、ひらがなで書いておけば、いろんな人に親切だろうというのは、一面的な思い込みにすぎないというのがよくわかります。


次に、文章を作る。こんな宿題、しかも毎回15個ずつ!これが苦痛である人は普通の人ですよ。患者だからではないと思う。
ただし、文章を作るのが好きな人は割とすぐに作れますよね。人それぞれかも....

これを長期間にわたって続けているのをみているわけですが、患者当人は、よみがなをつけるのを間違えたりするのにどうして、というくらい、やらされ感満載でやっています(笑。要するに、本も読まない人だし、嫌いなんだと思います。

けれど、これだけやり続けていると、さすがに文章の内容が豊かになり、やや長く複雑な話を書けるようになりました。これ、身内ながら、人間ってすばらしいと思いましたよ、実際。


話を戻すと、今回はこのワークシートを、創作したのです。

音は「は」からです。前回、「あ」からはじまったと思われる練習を「の」までなんとか終わっていたので、50音全部やるとすれば、のこりは半分です。1音につき、2枚かそれ以上ずつやっていたので、本当は「の」をもう1枚作りたいところですが、こちらも知恵が浮かばないので、あらたに「は」から始めることにしました。1枚ずつでいいのかな?

さて、「は」が最初、最後、あるいは単語のどこかに含まれる単語を15個。
最初に「は」がつくのは結構簡単に見つかりますが、最後?途中?これ思いつく以外にどうやってみつけるの?
かもたまカタカナ語も交えないと。。。

結構、いい頭の体操になりました。なかでも快心の作は、「焼き畑」「紅白」です。「は」が「ば」にも「ぱ」にもならずに、ちゃんと語の途中に出現します。よく思いついた、自分。でも内心、結構好きだわ、この作業。


リハビリが終わることについては、患者本人は、つらい作業をやらずにすんで、内心かなり喜んでいたと思います。ただ、周囲がみんな、とにかく続けさせようとしているのを感じ取って、あまり表立って喜ぶことはしなくなりました。さらに会話の中で、まだまだ自分の発話能力にぜんぜん満足いかない、うまく表現できない、とコメントしたため、もうなんとしても、リハビリをつづけよう!という流れに。
そして無事、その流れにのっていただきました。


患者さんって、内心は本当に葛藤だと思います。なぜなら、中身は今までと同じ、何ら変わっていないのに、思ったり考えたりしていることが、思うように言葉にならない、という病気なのですから。本人はなにも変わってないんです。声に出してみると、思うようにならないだけなんですね。

さて、結構好きだわ、といいつつ、実際に言語リハビリの先生になるには、2年間フルタイムで学校に行き、さらに国家試験にパスして資格を得なければなりません。もちろん、その後現場で研修、何年かは修行みたいなものでしょう。担当していただいた歴代の先生方は本当に若く、苦労ははかりしれませんね。よほど決意しないと、これだけの長い道のりはこれません。有り難いお話です。

むしろ、社会人が長くなると、それがとても贅沢な経験にも思えてきたりします。うらやましいなあ。

リハビリ用のネタを作りながら、そのうち趣味が高じて勉強したくなったらどうしよう、それもいいな、と思っています。