高畑勲さん作『かぐや姫の物語』:この作品が好き
昨日映画館に行った帰りに、この本が出ているのを見つけて購入してきました。
ジ・アート・オブ かぐや姫の物語 (ジブリTHE ARTシリーズ)
- 作者: スタジオジブリ
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2013/12/24
- メディア: ムック
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昨年末に映画を観たときには、ほんとうにいいものを見せていただいた、という気がしたものですが、さらにその後、WOWOWの「ノンフィクションW」でこんな番組をやっていて、録画しました。
ノンフィクションW 高畑勲、「かぐや姫の物語」をつくる。|ドキュメンタリー/教養|WOWOWオンライン
はっきりいいます。これはもう何も言えない話でした。
高畑さんは、宮崎さんと40年ほどでしたか、ともにスタジオジブリで監督という屋台骨であり看板職をされているわけですが、お話を伺うにつれ、作品に出ている以上に、お二人のものの考え方がまるで違うことに気づかされます。
わたしはどちらも好きで、尊重しているのですが、このかぐや姫に至っては、高畑さんの粘り、根気が尋常ではなく、未だかつて、だれも作ったことのないものをつくるということの意味合いを、身を以て証明してくださったような気がしました。
つまり、だれもつくったことのないものを作るということは、自分の頭の中に浮かんだ、(おそらくですが)これはいい、すばらしい、と感じるイメージを、自分の力で自分の中から外に出さざるを得ないということです。
この、外に出すという作業に至る人はもしかしたら結構いるのかもしれないのですが、高畑さんのように、どこまで、自分がこだわるべきか、8年、前作(「となりの山田くん」)が1999年だったところから数えれば、実に15年。そこで終わるかどうかすら分からない中で、延々、自分のイメージを形にする作業を続ける。しかも、多くの人たちと、彼らの人生もかけてつづける。このすごさが実感できるでしょうか。実際、実感できているかどうかすら怪しいくらいです。そのくらいすごい。アカデミー賞作品賞をとったハリウッド大作のストーリーになりそうなくらいです。
また、WOWOWのドキュメンタリーでは、高畑さんが、映画監督に引退とかあること自体がおかしい、といわれていたことも印象的です。自分のイメージを形にするために、淡々とやりつづけるスタイルと、時期を区切ってエネルギーを注ぎきるスタイル。どちらがいい悪いではありませんよね。そのことを、この小さなエピソードが示してくれていると思いました。
高畑さんの制作のしかたは、プロセス自体がまるで異なる、というかジブリの中のスタンダード(「常識」)と真逆で、「山田くん」のときは、そのなかであえて自分のやり方をやろうとしたら、スタッフたちがとまどい、混乱してしまった。ということです。
そのやり方とは、まず声優さんの録音をすませてしまい、その後、声に合わせて絵を作っていくというもの。たしかに、かなり難しそうです。
さらに、観てすぐ分かる話としては、絵柄がまったく異なる。従来のいわゆるアニメーションの絵は、透明度ゼロの背景に透明度ゼロの人やものたちの動きをつけます。それが、山田くんのときにも挑戦していますが、今回、水彩、スケッチのタッチで透明感のあるアニメーションを作った。これのすごいところは、未完成で観る者に完成されたものを届けること、全編を通じて絵が描ける担当者がごくわずか(数人といっていました)だということです。
つまり、映画のプロジェクトで言うと、作画のところが全体のボトルネックになる訳です。しかし、肝の中の肝なわけですから、これはせかしようもないし、人をつぎ込んでなんとかなる話でもない。最後のスケジュール、同じジブリの『風立ちぬ』と同時上映という予定が組まれていたのですが、これもついに延期されてしまいました。
その進捗を心配して聞く宮崎さん、静かに応える鈴木さん、高畑さん。3人の姿が、TV画面の向こう側で、まるで自分の職場の上司のように思え、はらはらと、しかし信じて背中を見守った体験がしました。
映画を観に行くと、動画になった姫は、本当に愛らしく、賢そうで、時に気性が激しく、朗らかで、美しいです。命が吹き込まれています。
※ なお、もっと壮絶な詳しい応酬の話、もっとドロドロした感じの現実の話は、こちらのブログに書かれています。読むだけでたのしい、ありがとうございます。
2014-01-18
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